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INTERVIEW with THE PRODUCER MATSUHASHI

――まずは続編の企画の経緯からお願いいたします。

私自身はパート1を撮っていた時から、もちろん続編をやりたいという気持ちで構想はずっと練っていました。ただ、莫大な予算がかかるうえに、物語のスケールがさらに大きくなっていく。『キングダム』(19年4月公開)が、すごく良い結果にならないと次には進めないと思っていたところ、幸いなことに大ヒットとなり、19年夏頃に正式に「続編をやりたい」というお話を原先生にさせていただきました。それから脚本に着手しました。

――原先生は前作に引き続き、今回も共同脚本として参加されていますね。

連載は後戻りできませんから、シーンの追加や書き直しはできない。ご自分が漫画で描けなかったことが映画で実現できたと感じられたシーンが、前作でいくつかあったそうなんです。連載時よりも完成形に近いイメージで作れたことが、映画作りのひとつの喜びだったと先生はおっしゃっていました。今回も原作にはない、映画ならではのシーンがいくつかあります。たとえば、信と羌瘣のあるエピソードが追加されていますが、原先生にしかできない創作だと思いますし、ぜひ楽しみにしていただきたいです。今回も先生には、深く関わっていただきましたし、こちらも原作に対するリスペクトをもって意見交換しながら作っていきました。

――続編製作にあたり、豪華キャストの方々が再結集されました。

キャストの皆に愛され、続編をやりたいと言ってもらえる作品で本当によかったなと。大作ですから資金面の心配と、スターだらけなのでスケジュール調整の苦労はあるんですが、役者のチームワーク、意気込みという点で心配することはひとつもない。本当に喜ばしいです。

――今回の『キングダム2』で山﨑賢人さん演じる信に期待したこと、および山﨑さんの現場での座長っぷりはいかがでしたか?

前作の信は、自分の意志とは関係なく戦いに巻き込まれ、翻弄されるキャラクターでしたが、ラストで初めて自分の生きる道を決めて、その最初の一歩を踏み出すのが本作なんです。ここからは、自分の夢を叶えるために一生懸命頑張り、人を引っ張ってまとめていく人物に成長していく。そこをしっかり表現してほしいと伝えました。彼自身、『キングダム』のヒットを受けて、主演俳優としてすごく成長したと思うんです。今回も大規模な大作で、錚々たる役者陣を束ねていかないといけないんですが、山﨑さんはぐいぐい周りを引っ張っていくというよりは、みんなに愛されて、周りを一つにしていくタイプ。山﨑さんのためなら頑張ろうって思ってくれる人が、たくさんいたんじゃないかなと思います。まさに信そのもの。とても素敵な主演俳優でした。

――大沢たかおさんは再び王騎の体をつくって、今回の作品に臨まれています。

前作の撮影後、他の映画や舞台のためにスリムな体に戻されていたんですが、『キングダム2』のクランクインに向けて、再び体づくりをしてもらいました。大沢さんは本当にプロフェッショナルなので、どのぐらいの努力をしてきたか決しておっしゃらないんですけど、前回よりも体がさらに大きくなっていて、前回の衣装が入らなかったんです。しかもまた衣装合わせのたびに体が大きくなっているので、今回だけで5回作り直しました。『キングダム』の実写化が成功したのは、人間離れした偉大さをもつ王騎に説得力を持たせた、大沢さんの力によるところが大きいと思うんです。これだけ厚みのある作品にできたのは、大沢さんのおかげで、本当に大沢さんにお願いしてよかった。実は、前作をつくるときに、2時間の映画に収めるためにいっそのこと王騎がいないほうがいいんじゃないかっていう意見もあったんです。でも、『キングダム』をやるにあたって王騎は外せないキャラクターですし、「絶対続編を作りますから」と言って残した経緯があるので続編が作れてよかったです。

――今回から加わった羌瘣役の清野菜名さん、麃公役の豊川悦司さんについては?

羌瘣を演じるには、いままで見たこともないアクションに挑むための身体能力の高さと素養が必要です。さらに、キャラクターの持つ哀しみを表現できる高い演技力も求められます。大人気キャラクターですのでプレッシャーも相当と思われましたが、全てをはねのけてファンを納得させられるのは、清野さんしかいないと思いました。羌瘣のように、心が清らかで、優しさと芯の強さを併せ持つ清野さんと是非ご一緒したいと思い、オファーしました。

そして、麃公将軍は、百戦錬磨で戦場を生き抜いてきた秦国最強の大将軍のひとりであり、原作でも大人気のキャラクターです。 その野獣のような眼光と、巨大な鎧を着こなす大きな体躯、そして大将軍としての存在感、説得力。それを考えると、豊川さんしか思い浮かばず、ご出演のお願いをしました。豊川さんの演じる本能型将軍の最高峰・麃公将軍の勇姿とその感動を、主人公の信が間近で感じるように、観客の皆さまにも劇場の大スクリーンで感じていただきたいと思います。

――中国のロケ地はどのように決めたのですか?

19年の夏に、私含め3人で一度中国をロケハンして、蛇甘平原のシーンなどの撮影場所を大まかに決めていました。その後、20年1月に今度はメインスタッフ30人ぐらいでロケハンに行き、詳細を詰めていきました。コロナショック直前のことです。未曾有の事態により、日本での撮影を進めながら、中国ロケを後ろ倒しにと調整を重ねていたのですが、いつになっても新型コロナ関連の状況は改善されず、この調子だと中国ロケに行けないのではと思い始めました。それで考えたのが、究極のリモート撮影です。

――どういう方法なのですか?

選りすぐりのダイナミックなシーンを中国で現地スタッフに撮ってもらうという方法です。まずは中国の撮影に日本人スタッフが参加しないと決めた時点で、もともと中国で撮る予定にしていたシーンの絵コンテを用意し、すべてのカットを検証し、日本で撮るカットと中国で撮るカットを仕分けしていったんです。たとえば、大量の馬や兵士がいるようなカットはどうしても中国で撮る必要があったんですが、中国のロケハン自体はすんでいたので助かりました。中国での監督は、ジャッキー・チェン作品のアクション監督・何釣(フージュン)さんです。助監督は『レッドクリフ』のチームが担当。大作に慣れている人たちにお願いしました。

――具体的には、ほしいカットをどのように伝えていったんですか?

佐藤監督が決めたカット割りを見ながら、日本チームと中国チームがワンカットずつ検討していきました。カメラ位置はここでこういう隊列を組んでこういうカットを撮る。そのためには何が必要か、ワンカットワンカット、詳細まですり合わせていったんです。撮影期間は45日で、膨大なカット数があり、だいたい一日あたり、1000人ほどのスタッフ、エキストラが参加している大掛かりな撮影になるので、日々の計画を立てるのが本当に大変でした。エキストラと言っても、ジャッキー・チェンのアクションスクールに通っている人たちにも多数参加してもらっていて、そういう方たちには撮影の一か月以上前から、本作のためにトレーニングしてもらっています。衣装については、日本で使ったものと同じものを中国で作って使用しました。こういうリモートでの撮り方をした映画は、世界的にないんじゃないかと思います。

――馬も前作に続き100頭ほど?

そうですね、日本だと、撮影用の馬を日本中からかき集めても10数頭にしかならないんです。中国だとよく訓練された馬を100頭ぐらい集めることができる。スケール感を出すには、どうしても中国での撮影が必要でした。ちなみに山﨑さんは本当に乗馬が上手くなって、走っている馬に飛び乗ったりもできるんです。ほとんどのカットをご本人で撮ることができました。

――日本のロケ地についても教えてください。

前作同様、日本中回りました。アクションシーンは主に長野県・東御市のオープンセットで撮影しました。これもいろんなことを検証した結果なんですけど、中国みたいな大地は日本にはない中で、広大な地での戦闘シーンを撮らないといけない。どこかに広い土地が残っていないか、スタッフがグーグルマップで探したら長野の東御市に巨大な空き地があったんです。もともと企業の用地で工場を立てる予定が、コロナ禍でストップしていたそうで、広いだけじゃなく、片側が崖なのも好都合でした。そこに巨大なグリーンバックを設置して撮影していきました。

――あらためて佐藤信介監督の手腕について。

最新鋭の技術を含め、あらゆる最高のものが結集しないと撮れない作品だと思うんです。佐藤監督は、映画製作の基本をしっかり学んでこられた方ですし、『キングダム』の大ヒットもあって巨匠になりつつある方だと思うんですけど、これだけの大作をまとめ上げられるのは、やはり佐藤信介さんしかいなかったなと。日本の歴史の中に残るシリーズにしたいですし、プロデューサーとしては、監督が自信をもって世に出せるようなクオリティを担保したいと思っていました。

――コロナで撮影が危ぶまれた中、『キングダム』は先陣を切って撮影されていました。

コロナが流行り出した頃に、この業界のいろんな作品の撮影がストップしたんですよ。すると、映画って基本フリーのスタッフが多いので職を失う。ここからどうすれば、というような話があちこちで頻発していて、職を辞めようとする人もいて、先行き不安な空気が流れていました。そんなときに、『キングダム』とNHKの大河ドラマがどうするかが、業界の指標になるようなところがあったんです。このふたつが撮影スタートすれば、業界的にまた撮影を始めることができるという雰囲気があって、自分が踏ん張らないと撮影が中止になってしまう。どこかで映画製作を止めないということも大事なんじゃないかなと思って突き進みました。もちろん無謀にではなく、病院と業務提携し、保険も用意し、スタジオでの検温消毒体制、検査体制を構築し、ものすごく感染症対策をしっかりして、撮影していきました。結果、約1年にわたる撮影中、スタッフ・キャストで撮影中にコロナに感染した人はゼロだったんです。無事、走り切ることができました。

――『キングダム2』にかける意気込みをお願いします。

日本映画界の歴史に残る作品、シリーズにしたいと思っています。技術的なクオリティはもちろん、日本のトップの役者陣が勢ぞろいして大バトルを繰り広げるというダイナミズムを含めて、期待値を裏切らないどころかはるかに超えるようなクオリティで提供したいと思っていますので、ぜひ楽しみにしていただきたいです。