INTRODUCTION
  • 映画化不可能と言われた原作、奇跡の
    実写化−−−「キングダム」映画化始動。LINK
  • 原先生自ら参加しての脚本作業LINK
  • 順調から一転⁉
    約12時間ぶっつづけの脚本会議LINK
  • スタッフだけで一日700人!
    巨大スタジオでの中国ロケLINK
  • 信を演じるのは、山﨑賢人しかいないLINK
  • 『キングダム』の世界を
    体現する豪華役者陣LINK
  • 世界規模で作られた
    映画『キングダム』への期待LINK
  • 映画化不可能と言われた原作、奇跡の
    実写化−−−「キングダム」映画化始動。

    松橋:原先生のところに映画の企画書をお持ちしたのは、2015年頃です。「キングダム」は映画プロデューサーなら誰でもやりたい素晴らしい企画ですし、私も昔からぜひ実写化したい作品でしたが、いざ作るとなったらものすごい製作費がかかるので、相当な覚悟がいる。おいそれと企画を持って行けずにいたんですが、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント、コロンビア・ピクチャーズ代表のサンフォード・パニッチさんが、「一緒に日本映画を作りたい」と言ってきたんです。彼は以前20世紀FOXにいた時に『タイタニック』を担当しているのですが、その製作の際に予算超過しても作品を完成させるために作り続けた人なので、『キングダム』の話をする価値があるなと思って。原作の1巻から5巻までのストーリーと、いかに素晴らしい漫画かを英語にして、アメリカに送ったら、3日後にぜひやろうと返事が来たんです。なので私は大きな援軍を味方につけた状態で集英社さんにご提案をしたんです。

    原:嬉しいですね。「キングダム」は10年間連載していて、全然実写化の話がなかったので、もうないものだと思っていました。今回、最初に当時の担当編集から連絡があったとき、「やっと映画化の話が来ましたが、たぶん流れるので、信じないでください」と言われたんです(笑)。でもその後、脚本が上がってきて、それが第2稿だったんですね。これは本当にやるんだと思いました。そして初めて松橋さんにお会いして、「やりましょう。お願いします!」と。松橋さんが鋭いなと思ったのが、僕は王騎と龐煖(ほうけん)の戦い (16巻)まで描くんだろうなと思っていたんですよ。アニメの一期もそこまでやりましたし。でも、そのとき松橋さんから「5巻までで充分面白いです。勝負できます」と言われたんです。すごく嬉しかったですし、英断だなと思いました。

    松橋:最初の企画からそのつもりでした。それでも映画にすると2時間ちょっと。ぎっちりです。

  • 原先生自ら参加しての脚本作業

    松橋:漫画を映画化することに最近よく批判もあったりするじゃないですか。私は小さい頃から手塚治虫先生の漫画が大好きなんですが、先生はよくインタビューで、「僕は映画が大好きで映画を撮りたいんだけど、そのお金がないから漫画を描き始めた」というようなことをおっしゃっていました。だからきっと本来漫画と映画は相性のいいもので、漫画家の先生も、自分の作品が映画になったらいいなとどこかで思ってくれているのでは、という思いで映画化をご提案するんです。原作の先生が、「こういう映画にしたい」というものがあるなら、それを実現させるのが自分の仕事。ですから、もし原先生に脚本作りにもご参加いただけるのであれば、ぜひ参加してほしいとお話をしようとしていたタイミングで、逆オファーをいただきました。

    原:僕は、映画は映画監督のモノだとずっと思っていたので、映画化するとなったら、その覚悟をもって送り出すような気持ちでしたが、脚本までは関われたら嬉しいとお伝えしたら、ぜひと言っていただけました。というのも、いち映画ファンとして、映画はまず脚本が大事だと思っているんです。脚本がよほど変じゃない限りは、安心してお願いできるなと。

    松橋:原作の先生が脚本に参加していることは、原作ファンの皆さんにとって大事なことだと思うんですよね。脚本の黒岩(勉)さんとも話していたんですけど、原作をまとめていくことはできても、改変は先生がいらっしゃらないとできないんです。連載でお忙しいなか、脚本を読んでいただき、何度もやりとりさせていただきました。

    原:今回の映画化は5巻の「王都奪還編」までですが、僕が連載していたときはそこを2時間もののパッケージとして描いていないので、大胆に変えないと一つのお話として成立しない。もし気を遣われてそれができないと脚本が失敗すると思ったので、僕が入って「どんどん変えてください」と言わないといけないなと。結構早い段階から、「ここは捨てていいです」とか、「つなぎをアレンジしましょう」と話をしていました。

    松橋:先生の口からそれを聞けてほっとしますとよく言ってました(笑)。

    原:そこまで消さなくていいですとも結構言われましたよね(笑)。当初は王騎も外してもいいのではと言っていたんです。

    松橋:そこは大丈夫ですと言って止めました(笑)。原作ファンの方は王騎が出なかったらショックを受けるので。

  • 順調から一転⁉ 約12時間ぶっつづけの脚本会議

    原:出だしは順調で、撮影までに時間が逆に余っちゃいますね、とすら言っていたんですが、撮影の都合でランカイと左慈のシーンを入れ替えたいっていうリクエストがあって。それはけっこう悩みました。それで、僕が東京に来て、脚本が終わるまで帰らないっていう会議を集英社でしたんです。テーブルの上に軽食を並べて、一度のトイレ休憩があっただけで、ほぼ12時間缶詰め。なかなかアグレッシブな会議でした。

    松橋:冒頭から全部詰めていって。

    原:そうですね、セリフの細かいところまで精査していき、そこからいよいよ左慈とランカイの入れ替え。どうやったら原作以上に面白くなって、原作ファンの方にも改変して良かったと思ってもらえるのかを考えていました。入れ替えた場合、ランカイが先に狭い回廊に出て、最後に左慈が出てくることになる。でも、ランカイの方が見た目が強そうなので、左慈だと武力的にはラスボスが来たようにたぶん見えない。では誰なら納得できるか考えて、まず乱暴に思ったのが、信が将軍になりたい人なので六大将軍が待っていたら盛り上がるなと。でも、それは無理なので、原作から左慈のキャラ設定を変えて、ドロップアウトした元将軍にしようと。漂と一緒に将軍になる夢を見てキラキラしている少年の信が、元ではあるけど目標とする将軍の男と対峙するのはすごくドラマチックになる。これは面白い脚本になると思い、それをプレゼンするために集英社で会議をしてもらったんです。今の説明をホワイトボードに書いたんですよね。こういう図式で、敵を将軍にすれば大丈夫ですと。

    松橋:そうです。ホワイトボードの写真撮ってますよ。

    原:それから、映画オリジナルのセリフを作らせてもらいました。原作の黒羊(こくよう)編で、桓騎(かんき)軍の兵達が信をバカにして、尾平(びへい) がそれを許さないドラマがあるんですけど、それをアレンジしてここに持ってくると原作ファンも面白いと思ってもらえるんじゃないかと。左慈の「戦場に夢なんて転がってねえ」っていうのは、それはひとつ正しい言葉 なんですが、でも信にとってはそうじゃない。そのドラマを作った会議でしたね、あれは。

    松橋:「キングダム」らしい一気通貫したテーマがそこでできたなと。たぶん、打ち合わせをしている間ずっと心の中にあったことが、初めてちゃんと言葉になったような感じがしました。これは夢を語る話なんだなって言う。

    原:そうですね。だから結果、左慈とランカイを逆にして良かったですね。ただじゃ起き上がらない感じで。

    松橋:そうですね。先生がおっしゃったとおり、左慈が言っている言葉も、左慈が経験した人生の中でひとつの真実。対して夢を持っている信が何という言葉で返すか。「キングダム」は熱い戦いだけでなく、熱い舌戦もあるのが魅力。それをこのシーンでやれたらすごくいいものになるんじゃないかと。ちなみに、信が立ち上がるクライマックスの部分は、打ち合わせをしながら先生が絵コンテを何ページも描いてくださって。

    原:もうちょっときれいに描きたかったですね。ヘロヘロでしたから(笑)。

    松橋:完成した脚本は、かなり手ごたえがありました。中国で撮影申請するためのギリギリのスケジュールでしたね。あとは撮るだけ。ただ撮るのがすごく大変だけどなって(笑)。

  • スタッフだけで一日700人! 巨大スタジオでの中国ロケ

    松橋:日本ではなかなか撮れない、壮大なスケールの画が絶対に欲しいと思っていたので、当初から中国で撮る予定でした。シナハン(シナリオハンティング)の際に、咸陽や城をどこで撮るか3か所ほどロケハン(ロケーションハンティング)し、結果、浙江省にある象山スタジオが、春秋戦国時代のセットもあり、今回はベストだという結論であそこで撮っています。

    原:中国での撮影を見学させてもらったんですが、担当編集と一緒に上海に入ってマイクロバスで5、6時間かけて行き、遠足みたいな気分で楽しかったです。着いたら、たくさんある撮影区画の中の一つが、がーっと盛り上がっていて、ついに来たなと。撮影の裏側を見るのは初めてで、ただの映画ファンとして、キョロキョロ、ニコニコしていました。

    松橋:あのスケール感をご覧いただけたので、たぶん安心していただけたんじゃないかなと。

    原:いやあ、驚きましたし、安心しました。

    松橋:中国の中では中規模な撮影スタジオなんですけど、日本と比べると、象山スタジオの駐車場の中に太秦映画村が入っちゃうぐらいのサイズ。この映画のスタッフだけで、多いときは1日に700人ぐらいいたんですよ。

    原:僕が考えて、紙とペンで始めたものが、そんな壮大な現場になっていたので、正直大変なことになってしまっているぞと、一瞬冷や汗が出ました(笑)。あの空間をイメージして作った人はすごいと思います。僕は絵では描けるんですけど、実写でどう空間になるかまでは、想像できていなかったので。

    松橋:まず中国を経験した後に、日本で撮影できたのはすごく良かった。役者の気分的にも、作り手側にとっても良い流れだったかなと。『キングダム』で重要なのがモブシーン。大量の人が合戦をする、大量の騎馬が登場するっていう迫力が絶対に必要なのですが、日本では撮影不可能。中国だと100頭近くの馬を用意できましたが、日本ではかき集めたとしても、数頭って言われているんです。

  • 信を演じるのは、山﨑賢人しかいない

    松橋:この映画の前に、「キングダム」10周年記念の特報動画があったじゃないですか。そのとき信役を山﨑さんが演じていて、それが支持されていたんです。ここを裏切ると逆に大変なことになるなと。また私は山﨑さんと何回も仕事をしていたので、彼が信にぴったりの人だっていうのはよく知っていたんです。愚直に一生懸命頑張るまじめな人間で、かわいげもあり、みんなに愛される。彼は、いろんな役を演じてきましたが、一番ぴったりなのは信なんですよ。

    原:周りから、山﨑さんは信みたいな人ですよって言われていたんですが、僕はあまりテレビドラマや邦画で見る機会がなくて、人気のある方というのは知っていたんですが、信ぽいイメージはなかったんです。でも、博多で上演された主演舞台を観に行って初めてお会いしたら、まあびっくりするぐらいカッコ良くて。まっすぐにきれいな目でこちらを見て、飾らず素直に、ストレートに感情を伝えられる人で、吸い込まれるような不思議な魅力がありました。これが山﨑賢人くんか、みんなが信にピッタリと言うのがわかるなと思いましたね。中国の現場で見たときも、山﨑さんは主役なのに皆にいじられるんです(笑)。ほんと信ぽくて、愛されキャラで。

    松橋:山﨑さんは取り組みがストイック。体をどうやって作るか相談されたんですが、筋肉は必要だけど戦災孤児だからマッチョすぎると設定に合わない。ガリガリで筋張った筋肉があって素早く動く、誰よりも高く翔ぶのが信なので、細マッチョに仕上げてほしいと言いました。撮影の間もお弁当を食べずに家から持ってきたささみとブロッコリーばかり食べて過ごしていました。

    原:実際すごい体になってましたよね。僕は一度中国で、山﨑さんや吉沢さんとゆっくり話をする機会があったんです。中国ロケではクライマックスのシーンを撮っていて、最初の導入の漂が死ぬシーンは日本に帰ってから撮ると。それを聞いて、あのシーンが掴みとして一番大事だという話をしたんです。「キングダム」が成功した理由は一話目にあって、漂が死んで夢を託されるから信はそこに立ち返れば絶対立ち上がれる作りになっている。だから、そこでいかに信が泣いて、見ている人が泣けるかが大事だと熱く語りました。そして、ラッシュで実際に見たら、素晴らしい演技で最高のシーンになっていました。山﨑さんに対する世の中のイメージがこの『キングダム』で変わると思います。ドハマり役です。

    松橋:また役者として一回り大きくなると思います。

    原:信が山﨑さんで本当に良かったです。

  • 『キングダム』の世界を体現する豪華役者陣

    松橋:キャスティングは2年前ぐらいで、その頃は、嬴政を「吉沢亮でいきたい」と言っても、まだ今ほど売れていなくて、「知らない」という反応ばかり。かなり反対されましたが、映画が公開するころには絶対大スターになっているからと説得しました。

    原:間違いないって言われたんですよ、強く。それで、信じます、いきましょうと。今は予言通り大人気で、松橋さんさすがだなと。現場で初めて吉沢くんの嬴政を見たとき、中華統一を目指すことを宣言する、重要なシーンを撮っていたんです。激を飛ばす声が大事で、ちゃんと奮い立たせられる声質なのか気になっていたんですが、ばっちりでしたね。声も含めていいし、品格もあるし。

    松橋:こんなイケメンの王子見たことないだろうみたいな(笑)。大沢たかおさんは、半年以上かけてトレーニングし、体重をかなり増やされました。身長が180センチ以上あるので、ほぼプロレスラーみたいな体形になって。スーパーマッチョですよ。それぐらいの役作りで頑張ってくださった。

    原:迫力ありましたよね。大沢さんは現場で見ると、腕の太さが普通の人の2倍ぐらいありました。目の前にいると緊張するぐらいオーラのある方で、これが大沢たかおさんなんだ、王騎なんだっていう感じでした。長澤まさみさんも光り輝いてましたよね、現場に人がいっぱいいるのに、長澤さんの楊端和のところだけスポットライトが当たっているようでした。

    松橋:ほぼ男しかいませんから、現場に。そこに楊端和が登場すると、みんな「ほぉー」って(笑)。

    原:長澤さんの殺陣もすごく迫力ありました。ストレッチやってる姿も本当に戦えそうな感じで。

    松橋:背も高いのでやっぱりかっこいいですよ。

    原:楊端和のビジュアルは、ハリウッドでも活躍されているデザイナーさん(山の民コンセプチュアルデザイン・田島光二)が担当なんですよね。最初に上がってきたイラストが、もうすごかった。「あ、こう描けばよかったんだ」って僕が思うぐらい(笑)。僕は田島さんが手掛けてくださったバジオウのお面を見たとき、間違いないと思っていたんです。原作も最初の方は特に、結構ノリで描いてるんで、目も見えているのかわからない感じなんです。実写化するときに質問されても困るなと思っていたんですけど。

    松橋:(笑)。

    原:ちゃんと僕の描いたバジオウをベースにして、バランスを崩さず、よりカッコいいデザインにしてくださっていました。あと、橋本環奈ちゃんの河了貂。現場でめちゃくちゃ可愛かったです。ゆるキャラみたいな感じでぴょこぴょこ動き回って。

    松橋:平均身長みんな高い中、ただひとりだけ小さいですからね。

    原:また衣裳も絶妙ですね、リアルだし。

    松橋:これも何回作り直したのか。

    原:環奈ちゃんは原作好きみたいで、中国ロケのときに話を聞いたら、「自分が貂になるのも嬉しいんですけど、目の前に信がいて、王騎がいることに、うわー! と興奮しました。キングダムの世界です、ここは!」って。そういうファン目線が面白かったです。

  • 世界規模で作られた映画『キングダム』への期待

    原:まだCGが入っていなくて台詞の音調整もされてない、ラッシュ段階の映像を見たんですが、5回ぐらい泣きました。まず漂の死が、すごく泣かせるシーンになっていたので、これはいける! と。観客目線かつ、作り手側の目線で、テンションが下がるところはないか、大丈夫かという目で見ていましたが、最後の左慈のところもよかったし、全然、長さも感じなかった。とにかく役者さんの演技が素晴らしいですし、ずっと面白かったです。

    松橋:完成品はもうそんなものじゃないですよ。滝のように泣けると思います(笑)。

    原:ははは(笑)。楽しみですね。本当に素晴らしい作品になると思います。佐藤監督はじめ、スタッフ・キャストの皆さんには本当によくぞ作ってくださったという感じで。

    松橋:『タイタニック』を担当したコロンビア・ピクチャーズ代表から始まって、中国ではチェン・カイコー監督作品の現場もやっているスタッフと一緒に作って、世界で活躍するONE OK ROCKが主題歌を書き下ろし、劇伴はハリウッド映画の録音も多数行われているウィーンで、オーケストラ録音。本当に世界的な規模でやってます。

    原:原作を知らない方にも原作ファンの方にも、楽しんでもらえる作りになっているかと思います。

    松橋:心血注いだ作品です。できるわけないだろうと思われた映像化ができていますので、ぜひご覧いただきたいですね。

loadingIcon